夏の風物詩と言えば、花火、かき氷、風鈴、スイカ、そして「夏の甲子園」ですよね。
甲子園中継を見ていると「アルプススタンドから熱い声援が届けられている」という言葉を聞いたことがあると思います。でも、プロ野球の中継では「アルプス」なんて聞いたことがないような・・・。アルプススタンドって、どこの野球場にもあるのでしょうか?意外と知られていないアルプススタンドについて調べてみました。
アルプススタンドは甲子園球場にしかない!?
アルプススタンドとは、阪神甲子園球場の内野席と外野席の間にある観覧席のことを指します。高校野球の試合では、アルプススタンドで吹奏楽部や応援団・チアリーディング部の生徒たちが、華やかに熱い応援合戦を繰り広げます。基本的にその学校の関係者が入り、学校の応援をします。
このアルプススタンド、実は甲子園球場にしかありません。そもそも、球場に「アルプススタンド」という概念がないのです。では、なぜ甲子園球場ではアルプススタンドがあり、チケット購入の際もアルプス席というのがあるのでしょうか。
アルプススタンドができた経緯は観客の増加
甲子園球場の建設当時、内野スタンドは50段の鉄筋コンクリート製でした。その後、徐々に観戦客が増加し、外野のファウルゾーン東西スタンドと外野席が、盛り土の上に20段の木造スタンドで建てられました。
さらに中等学校野球(現在の高校野球)の人気が高まっていく中で、その当時「巨大球場」と言われていた甲子園球場でも、さらに観客席を拡大させる必要が出てきました。そして、1929年に工事が行われ、外野のファウルゾーン東西の20段の木造スタンドは、50段の鉄筋コンクリート製へと改修されました。この改修、増築されたエリアが現在の「アルプススタンド」となっているわけです。
アルプススタンドの由来は「アルプス山脈」
甲子園が改修された年の夏の甲子園大会も球場は超満員となり、新設のスタンドは白いシャツを着た観客で埋め尽くされました。その様子を朝日新聞記者として取材していた人気漫画家の岡本一平氏が
「ソノスタンドハマタ素敵ニ高ク見エル、アルプススタンドダ、上ノ方ニハ万年雪ガアリサウダ」
と表現、8月14日の朝日新聞に掲載しました。これ以来、内野席と外野席の間の大観客席は、「アルプススタンド」と呼ばれるようになったのです。ちなみに、この岡本一平さんは「芸術は爆発だ!」で有名な画家・岡本太郎さんのお父様にあたります。
アルプススタンドの応援が試合を変える!
応援によって力を発揮できるというのは、スポーツをされていた方ならわかる感覚かと思います。それが、この甲子園においては顕著に出てきます。
近年では、2016年の東邦高校と八戸学院光星高校の試合で発揮されています。5点ビハインドの東邦高校9回裏の攻撃で東邦高校のアルプスから最後の力を振り絞った応援がなされていました。その応援が球場全体に広がり、まるで甲子園球場全体が東邦高校を応援しているような雰囲気となり、逆転サヨナラ勝ちを果たしました。
また、智弁和歌山高校のジョックロックも「魔曲」と表現され、幾度となく逆転劇を演出しています。このようにアルプススタンドの力も非常に大きく、注目を集める要因と言えます。
アルプススタンドは学校関係者以外は入れない?
アルプススタンドは各校の応援団が入ることになっているので一般客が入ることはできないように思えますが、実は一般客も入ることも可能です。筆者も数年前に智弁和歌山高校のアルプススタンドに入り、一緒に「ジョックロック」で応援をしました。残念ながら試合は星稜高校に負けてしまいましたが、あの熱気はまた肌で感じたいと思わせるには十分なものです。
最後に
毎年多くの感動を与えてくれる「夏の甲子園」も、2022年で104回目となりました。もちろん、甲子園にはアルプススタンドの存在は欠かせません!今年は試合だけでなく、応援にも目を向けてみてはいかがでしょうか。